サステナブルな旅で避けるべきことは?旅先で知っておきたい注意点
はじめに:良い旅のための「知っておきたいこと」
サステナブルな旅行に関心をお持ちいただき、ありがとうございます。 「環境に優しい旅行」や「地域に配慮した旅行」と聞くと、「良いこと」「するべきこと」というイメージがあるかもしれません。しかし、具体的にどのような行動が望ましく、どのような行動がそうではないのか、判断に迷うこともあるかと思います。
悪気はなくても、知らず知らずのうちに環境に負荷をかけたり、地域に迷惑をかけてしまったりする可能性もあります。サステナブルな旅をより良く実践するためには、「避けるべきこと」や「注意すべき点」を知っておくことも大切です。
このページでは、サステナブルな旅行をはじめる方が、旅先で遭遇するかもしれない疑問や、つい見落としがちな注意点について、Q&A形式で分かりやすく解説します。
Q1:人気の観光地なら、どこに行ってもサステナブルですか?
A:人気があることと、それが常にサステナブルであるかは別問題です。
特定の場所に観光客が集中しすぎると、「オーバーツーリズム」と呼ばれる現象を引き起こすことがあります。これは、観光地の環境 capacity(収容能力)を超えてしまい、自然環境の破壊、景観の悪化、交通渋滞、物価の高騰、地域住民の生活への悪影響などを招く状態を指します。
たとえ有名な場所であっても、その場所がオーバーツーリズムの課題を抱えている場合、そこへの訪問自体が、その課題をさらに深刻化させる一因となる可能性があります。
知っておきたい注意点: - 特定の有名観光地に観光客が集中する時期(例:大型連休、特定の季節)は、環境や地域社会への負荷が高まりやすい傾向があります。 - SNSなどで一時的に人気が爆発した場所も、急激な来訪者の増加に対応できず、問題が発生することがあります。
代わりに検討したいこと: - 旅先の「旬」を少し外した「オフシーズン」に訪れる。 - 主要な観光地だけでなく、周辺の隠れた魅力を持つ地域や、人が分散するような場所を組み合わせて訪れる。 - 地域のキャパシティに配慮した、少人数制のツアーなどを選ぶ。
Q2:自然の中でなら、少しぐらいの行動は大丈夫ですか?
A:たとえ自然の中であっても、守るべきルールやマナーがあります。
国立公園や自然保護区など、特定のルールが定められている場所はもちろんのこと、そうではない場所でも、自然環境やそこに生息する動植物への配慮は不可欠です。
例えば、植物や昆虫を無許可で採取する、動植物に餌を与える、指定された場所以外に立ち入る、焚き火を無許可で行う、大きな音を出すといった行為は、繊細な生態系に悪影響を与える可能性があります。
知っておきたい注意点: - 立ち入り禁止区域や、ロープなどで区切られた場所には絶対に入らない。 - 植物や石などを記念に持ち帰らない(特に国立公園や景勝地など)。 - 野生動物にはむやみに近づかない、餌を与えない。 - 歩く際は指定されたトレイルや道を外れない。 - 焚き火やバーベキューは、許可された場所のみで行い、火の始末を徹底する。
代わりに検討したいこと: - 地元の自然ガイドと一緒に散策し、地域の自然について学ぶ。 - 自然保護を目的としたアクティビティに参加する。 - 自然の中では静かに過ごし、五感でその場を感じることに集中する。
Q3:地域経済を応援するためなら、どんな買い物でも良いですか?
A:地域経済への貢献は素晴らしいことですが、購入する物品には注意が必要です。
地域で作られた工芸品や特産品を購入することは、作り手を応援し、文化を継承することにも繋がります。しかし、中には購入するべきではない物品も存在します。
例えば、絶滅の危機にある動植物から作られた製品(象牙、特定のサンゴ、野生動物の毛皮など)や、違法に伐採された木材製品などは、購入することが自然破壊や密猟を助長することになります。また、必要以上に大量のものを購入することも、過剰な消費として環境負荷に繋がります。
知っておきたい注意点: - 絶滅危惧種や規制されている動植物由来の製品、およびそれらを模倣した製品の購入は避ける。 - 購入する際は、それがどのように作られたか、どのような素材が使われているかに関心を持つ。 - 本当に必要か、長く大切に使えるかを考えて買い物をする。
代わりに検討したいこと: - 地元の食材を使った食事を楽しむ。 - リサイクル素材や環境に配慮した素材で作られた製品を選ぶ。 - 地域の文化や伝統に基づいた、持続可能な方法で作られた工芸品を選ぶ。 - 「認証マーク」が付いた製品を選ぶ(ただし、認証マークにも様々な種類があるため、可能であればどのような認証か調べてみる)。
Q4:旅先で出会った地域の人を自由に写真に撮って良いですか?
A:地域の方のプライバシーや文化への配慮は非常に重要です。
特に、子どもや高齢者、宗教的な場所での人物撮影、特定の民族衣装を着た人々などの撮影は、許可を得ずに行うとプライバシー侵害や失礼にあたる可能性があります。また、写真を撮ること自体が彼らの文化や生活様式にそぐわない場合もあります。
知っておきたい注意点: - 人物を撮影する際は、必ず事前にその方の許可を得る。特に個人が特定できるような写し方をする場合は、丁寧に依頼する。 - たとえ許可を得ても、相手が不快に感じるようなポーズやシチュエーションでの撮影は避ける。 - 宗教施設や特定の文化的な場所では、撮影に関するルールを確認し、それに従う。撮影が禁止されている場所では絶対に撮らない。 - 地元の祭事や儀式など、神聖な場面での無許可撮影は控える。
代わりに検討したいこと: - 写真を撮る代わりに、地域の方と言葉を交わしたり、一緒に時間を過ごしたりすることに集中する。 - 景色や建物など、人物を含まない形で旅の思い出を記録する。 - 撮影を許可してもらえたら、感謝の気持ちを伝える。
Q5:「エコフレンドリー」と書いてあれば、何でも信頼できますか?
A:「グリーンウォッシュ」という言葉に注意が必要です。
「グリーンウォッシュ」とは、企業や団体が、実際には環境に配慮していないにも関わらず、あたかもそうであるかのように見せかけることを指します。環境意識の高い消費者を取り込むために、あいまいな表現や根拠のない主張を用いることがあります。
宿泊施設やツアー、お土産など、様々な場面で「エコ」や「サステナブル」といった言葉を目にすることが増えました。しかし、その言葉の裏付けがしっかりしているかを見抜く力も必要です。
知っておきたい注意点: - 漠然とした「エコ」や「グリーン」といった表現だけでなく、具体的にどのような取り組みを行っているのか(例:再生可能エネルギーの使用、地産地消の推進、廃棄物削減の具体的な目標など)を確認する。 - 信頼できる第三者機関からの認証マークがあるかを確認する(ただし、認証マークにも様々な種類があるため、可能であればどのような認証か調べてみる)。 - 過度に都合の良い情報や、他と比較して極端に安価なものには注意する。
代わりに検討したいこと: - 公式サイトなどで、その施設や企業が公表しているサステナビリティに関する情報を確認する。 - 地域の自然保護団体やNPO、信頼できる旅行会社の情報も参考にする。 - すべてを鵜呑みにせず、「本当に?」と少し立ち止まって考えてみる習慣をつける。
まとめ:完璧を目指さなくても、意識することが第一歩
サステナブルな旅における注意点について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
すべてを完璧に実践することは難しいかもしれませんし、無理をする必要もありません。大切なのは、「知る」こと、そして「意識する」ことから始めることです。
今回ご紹介した注意点を頭の片隅に置いておくだけでも、旅先での行動の選択肢が変わってくるはずです。例えば、お土産選びの際に少し立ち止まって考えてみたり、地域のルールにいつもより敏感になってみたり。
あなたの小さな意識と行動の変化が、訪れる地域の自然や文化、そして人々の暮らしを守り、より良い未来へと繋がっていきます。これらの注意点が、あなたのサステナブルな旅を、さらに豊かで意味のあるものにするための一助となれば幸いです。